ペットロスケア🐾セラピスト橘りんかの豆知識【38】
- りんか 橘
- 2020年5月20日
- 読了時間: 5分
おじいちゃんの犬
【ストーリー】
孫:かわいい子犬!
祖父:命の教育にいいじゃろ ※1
孫:おじいちゃんのところで生まれた子犬なの、大切に飼ってね
友達:ありがとう
孫:子犬がいなくなってさびしい?
祖父:犬のことだ、すぐに忘れるさ
~~~~~~~~
孫:また子犬が生まれてる!もらい手をさがさなきゃ ※2
友達:この前もらったのがいるし…
友達:うちはアパートだからダメ
孫:こんなに残っちゃった…
祖父:犬なんて、つないでエサと水だけやっときゃいいんじゃ ※3
友達:うるさーい
臭ーい
怖ーい ※4
孫:子犬がいっぱい生まれてるよ!おじいちゃん! ※5
祖父:もうもらい手もないし保健所に持って行くか ※6
孫:かわいそうだよ
祖父:これが自然の掟なんじゃ ※7
孫:ふ~ん、いらない命はゴミみたいに捨てちゃっていいんだ… ※8
~~~~~~~~
孫:やだーまた子犬が生まれてる
汚い雑種なんてみっともない
早く保健所にやっちゃえばいいのに
ついでに年取ったおじいちゃんも捨てちゃおうかな、きゃはは
さて…どうしてこうなってしまったのでしょうか?
それぞれの※印について解説していきますね。

【解説】
※1 命の誕生をただ見せるだけでは、教育にはなりません
子どもに命の大切さを教えると謳(うた)い、飼っている動物に子を生ませる飼い
主がいますが、命を大切にする心は、生まれた命を慈しみ大切にする大人の姿を見
て始めて育つもので、ただ子犬や子猫を与えておけばいいわけではありません。
逆に、子どもに幼い命がぞんざいに扱われるのを見る経験をさせてしまうと、命を
軽視したり、自分の存在価値に自信が持てなくなるといわれています。
※2 メスの犬は約6ヶ月間隔で発情し、1回の出産で5~10頭の子犬を産みます
メスの犬は季節に関係なく6~8ヶ月間隔で発情し、年1~2回出産します(1年
に1回だけ発情する犬種もあります)。
1回に出産する子犬の数は犬種や体の大きさにもよりますが5~10頭ほどです。
毎回の発情で出産・育児をさせるのは犬の体に大きな負担となります。
オスの犬は決まった発情期はなく、発情したメスがいればいつでも交尾できます。
※3 犬は食べ物や住む場所だけでなく、人とのコミュニケーションを必要とします
社会的な動物である犬が心身ともに健康に生きていくには、生命を維持する食べ物
や水だけでなく、人や他の生き物とのコミュニケーションが必要です。
人とのコミュニケーションの不足は、犬にストレスを与え、過剰に吠える、他人を
極端に恐れる、咬みつくなどの困った行動の原因となります。
※4 世話できる数を超える動物を飼うことは、動物を苦しめ、周囲の環境も悪化させます
動物をきちんと世話するにはそれなりの時間と手間と経済力が必要です。
世話できる以上の数の動物を抱えると、適切な世話が行き届かず、動物を苦しめま
す。
環境も不衛生になり、悪臭や異常な鳴き声などで近隣住民や地域の環境に迷惑を及
ぼすだけでなく、人と動物の共通感染症などの危険性も高まります。
※5 犬は生後6~9ヶ月で子どもを産めるようになり、親子やきょうだいの間でも子ど
もを作ります
犬はオスもメスも生後6~8ヶ月で繁殖できる体に成長(性成熟)し、発情してい
れば親子やきょうだいでも交尾します。
犬は本能に従って妊娠・出産するだけで、自分で繁殖をコントロールすることはで
きません。
放置しておくと、発情のたびに妊娠・出産をくり返し、すぐにきちんと世話をでき
る数を超えてしまいます。
※6 全国で年間約1.3万頭の子犬が自治体に引き取られ、半数が殺処分されています
(平成24年度)
子犬が見たいという一時の感情で安易に生ませたり、無計画に生ませる飼い主のせ
いで年間約1.3万頭の子犬が飼い主から自治体に引き取られています。
成犬を併せると、飼いきれないという理由で年間約7.2万頭が飼い主から引き取ら
れ、保健所等では新しい飼い主を探す努力をしていますが、残念ながらそのうち約
4万頭が殺処分になっています。
※7 犬は人と暮らすように変化した動物で、自然に生きる野生動物ではありません
いぬは2万年以上前に人の近くで暮らすようになり、人間社会で生きるように人が
変えた生き物です。
犬の先祖を自然と切り離し、犬という生き物に変えたのですから、人は責任を持っ
て世話と管理をしなくてはなりません。
繁殖も人がきちんと管理する義務があります。
それを怠った言い訳に「自然の掟」を使うのは、無責任といえるでしょう。
※8 命をないがしろにする大人は、子どもに間違ったメッセージを伝えます
子どもは大人の言動を見て育ちます。
命を大切にする心も、動物を思いやる気持ちも、動物の正しい扱いも、大人の姿か
ら学びます。
きちんとした世話をせず、ただ生かしておくだけの飼い方や、安易に生ませては
「捨てる」という行為を見せることは、子どもたちに命に対する間違った考え方を
育て、やがてそれは社会に還って来るのではないでしょうか?
では、おじいちゃんはどう対処すれば良かったのでしょうか?
きちんと不妊去勢手術をし、オスとメスを飼っていても子犬が産まれないようにすること、そしてそのこと(子犬が産まれないこと)にお孫さんが疑問を抱いたら、
・不妊去勢手術をしてあること
・子犬が産まれなくても、犬たちは大切な存在だということ
などを伝えることで、命の大切さや動物への愛を教えることができるのではないでしょうか?
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